院長のブログ
食物繊維とクローン病について
食事と潰瘍性大腸炎,クローン病については外来診療時に患者様ご本人から,もしくは親御様からご質問頂くことが多く,本来であれば時間を割いて説明したいのですが,短い外来診察時間ではそれもままならず.このためこの場も利用して説明を補足できればと思っております.
食物繊維と言いますと,もれなく腸にはいいんだろうなあ~なんて思いますでしょうが,ヒトの小腸では消化が困難でありますし,マウスやラットの腸炎モデルにおいては,食物繊維は潰瘍の作成には欠かせない(つまり悪くする)要因の一つでもあります.
だから,小腸病変を有するクローン病の方で,特に狭窄症状をお持ちの方(しばしばお腹が痛くなる.詰まりそう(腸閉塞といいます)なエピソードをお持ち)においては食物繊維の摂取については細心の注意を払う必要があります(Clinical Gastroenterology and Hepatology 2020; 18).
しかし一方で食物繊維は腸内細菌,いわゆる善玉菌,にとっては大腸内でかれらの「エサ」になり,その代謝産物である短鎖脂肪酸は我々の腸の細胞にとっての栄養源となり,その中でも「酪酸」は抗炎症作用,抗ガン作用があり,我々を腸の様々な疾患から守ってくれていることが広く知られています(The ISME Journal 2017, 11).
また,食物繊維の消費量が多いクローン病の患者さまはそうでない方に比べて再燃(悪くなること)率が半分に減少することも報告されています(Clinical Gastroenterology and Hepatology 2016; 14).
さらに,クローン病に関わらず,潰瘍性大腸炎や大腸癌においても腸において酪酸菌を作ってくれている代表的な善玉菌の一つであるfaecalibacterium prausnitzii(フィーカリバクテリウム)が減少していることが報告されています(The ISME Journal 2017, 11).
これらのことを総合してみると,お薬でうまく病変をコントロールできているクローン病の方は,ぜひ食物繊維を積極的にとって再燃を予防したほうがいいということになるでしょう~~
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食生活と大腸癌というタイトルで今年も先月の26日に講演会を行いました.コロナ禍であり,参加人数も限らせていただき,皆様にご迷惑をおかけいたしました.この場をかりて,お詫び・お礼を申し上げます.これからも皆様に有意義な情報を提供できるよう,精進できればと思っております.どうぞよろしくお願い申し上げます.