前回に引き続き,胃カメラと画像強調(特にLCIという技術)とAIについてのお話です.
当院は経鼻内視鏡という鼻から挿入することのできる「極細径」のカメラを用いて検査を行っています.検査前の患者様からはよく「口から挿入するカメラの方が詳しく見えるんですよね?」というご質問を受けることがあります.
確かに,その通りではあります.
でもそれは,すでに見つけた胃がん・食道がんを治療前に詳しく見る場合や,がんをカメラで切除する場合などの限られた用途で力を発揮することが多いようです.それでは,胃がんや食道がんが心配で,がんの早期発見が目的で検査を受ける場合はどうでしょうか??
とても興味深い研究報告が本邦から出されています.
胃がんや食道がんの発見には普通に観察するよりもLCIという画像強調システムを用いる方が明らかにがんの発見率があがることがすでに確定的ではあるのですが,
経鼻内視鏡と経口内視鏡の食道がん・胃がん発見率を調べた場合は,極細径の経鼻内視鏡による検査の方ががん発見率が優れていたんですね!(Endosc Int Open 2022; 10: E88-E95)
画像の解像度も経鼻内視鏡は経口内視鏡と比べてなんら遜色ないことも同論文で示されています.
どうしででしょうか?理由は明らかにはなっておりませんが,細い内視鏡を使った方が患者様の負担が少なく,嘔吐反射なども少ないために,特に食道においては内視鏡医が「しっかり」観察できるからではないかと考察されています.
当院では同論文で使用された内視鏡よりも最新の経鼻スコープとシステム(ELUXEO 7000システム/LASEREO 7000システム)を用いて,なおかつCAD-EYEというAIを併用して内視鏡検査を行っております.これからも食道がん・胃がんの早期発見に向けて努力し,検査を受ける方々のためになれたらなと思っています.