水溶性食物繊維を摂取すると腸の中で腸内細菌によって発酵され短鎖脂肪酸(酪酸が代表)が生み出されます.産生された短鎖脂肪酸は我々の腸内環境を正常に保ち,我々のエネルギーとなり,炎症から守ってくれて腸を健康に保ち,抗腫瘍効果(これはまだ?)も期待されています.ここまではおさらいですね.
ところで,皆様は朝ごはんどうしてらっしゃいますでしょうか?ご飯派?パン派?私の家庭は平日は玄米,休日はライ麦や全粒粉の入ったパン.ということになっています.しかし子供達にはシリアルも人気が高いようです.長女はミルクをたっぷり入れて,次女は生??何もかけずにガリガリとネズミのようにかじっております.最近はいろいろなシリアルが発売されて,食物繊維が多く,健康にもいいみたいですね.
そうですね.どんどん食物繊維を摂りましょう!水溶性食物繊維をどーんと摂りましょう!!ということで本日の本題に入ります.Gastroenterology 2024; 166: 323-337に掲載された興味深い論文からのお話です.
水溶性食物繊維であるイヌリンを15-20%の高濃度で含有した食事をマウスの大腸癌モデルに22週間という長期間(マウスの寿命は2~2年半くらいです)与えたところ・・・なんと・・・イヌリン摂取群で明らかに大腸腫瘍の発生が多かったとのことです.これは他の水溶性食物繊維であるグアーガムでも同様の結果でした.
これは高濃度の水溶性食物繊維の摂取により,腸内細菌叢が乱れ(dysbiosisと言います),その結果善玉菌であるビフィズス菌の一種が明らかに減少し,ビフィズス菌の産生するイノシン(抗腫瘍効果を発揮)が減少した結果,腫瘍を容易に発育させることになったとのことでした.
この他に,水溶性食物繊維高濃度摂取群では短鎖脂肪酸である酪酸も増えており(これは当然ですが),これも腫瘍の発育進展を促進することになったのではないかとのことでした(酪酸は抗腫瘍効果も報告されていますが,一方で前がん細胞などに対してはこれを促進するとも報告されています.矛盾しているので,「butyrate paradox」と言われます.Cell Host Microbe 2014; 16: 143-145).
えーっ!!!まずいですね!食物繊維摂るのやめようかな?
安心してください.この実験では水溶性食物繊維が15-20%と極めて高濃度で,かつ長期間(ネズミちゃん人生の約1/4ですね!なんと)の連続摂取.さらにモデルが発癌剤を注射,もしくは遺伝子を改変して大腸癌ができやすくなった動物を対象にしています.これらは私たちの食生活の環境とはきわめてかけ離れており,非現実なんですね.論文の考察にもそう書かれています.私の娘たちが大好きなシリアルでも1.5~3%程度(同論文より)とのことでした.
なんでもほどほどにということでしょうか.それにしても面白い論文でした.
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妻が最近食べたランチの写真だそうです.食物繊維多いですね!eJDS(覚えていますでしょうか?日本食スコアのことです)も高そうだなー.