最近では当院の胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)でも,検診の内視鏡検査においても「バレット食道」と所見用紙に記載されることが多く,患者様から説明を求められることが増えています.
胃の粘膜は粘液を分泌することなどにより,胃酸から攻撃されないように自分たちを守っています.十二指腸はどうでしょうか?これは私も留学中に基礎的な研究で学ばせて頂きましたが,十二指腸は重炭酸を出すことによって,胃酸を見事に中和しています.
食道はどうでしょうか??残念ながら胃酸の攻撃に対しては大変弱いわけです.
そこで長年,胃酸の攻撃にさらされて,苦しめられていた食道の下部(胃に近いところ)の粘膜は,胃や腸の粘膜の様に「化ける」わけですね.これを「化生」といいます.化けることによって胃酸からの攻撃からのがれようとするわけです.
この「化生」は当然,胃酸が多い人,胃酸の逆流が多い人,で起こりやすく,もともと欧米人に多いとされていましたが,近年の食生活の変化や衛生環境(ヘリコバクター・ピロリ菌が減ってきた)の影響で本邦でも急速に増えてきているわけです.
問題点ですが,欧米ではバレット食道から発生する食道がんの増加が著しいということになっています.この点がネットなどで患者様が見て,心配になることが多いのです.しかし,本邦のバレット食道は欧米に比べるとずっとずっと軽症な例が多いので,現段階ではそれほど心配はいらないですよ.ということになっています(軽症例であるショートセグメントバレット食道の場合の話です).
このため,(上記の軽症例では)どういった頻度で内視鏡検査を受けたほうがいいのか,とか,食道がんを予防するために胃薬はずっと飲んだほうがいいのか,などは本邦ではまだ明らかにはされていません.
(参考文献:胃食道逆流症診療ガイドライン2021)